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新規個別指導で失敗しないために|歯科医院が押さえるべき準備・対策・よくある指摘とは?

「開業して最初の壁が、新規指導でした」
多くの歯科医院がこう語るように、開業後間もなく実施される「新規個別指導」は、診療体制・書類整備・カルテ運用などあらゆる面の確認を求められる重要な場面です。
本記事では、再指導を回避するための実践的な準備と対策を、指摘されやすい具体例とともにまとめました。これから開業を迎える先生方はもちろん、すでに準備を進めている方にもお役立ていただける内容です。
“最低限やるべきこと”を1枚にまとめたチェックリストをご用意しました。
初めての先生にもわかりやすく、院内でそのまま使える実践的な内容です。
✅ 患者指定前にやることは?
✅ 患者指定が来たら何を準備すべき?
✅ 書類の整備状況や掲示物の確認ポイントは?
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医療機関の個別指導とは?
2021年度個別指導結果は、医科で約7割、歯科では5割超が再指導・中断等となり、過去にない高い再指導率となっています。新規個別指導においても同様に再指導率が高い傾向があり、2021年度以降もこの数字が低くなることはなく、高い水準を保っているのが現状です。
再指導が多い背景と課題
「新規指導が想像を超えて大変だった」
「開業後に最初にあたった壁が新規指導だった」
「毎日真面目に治療をしていて自信を持って臨んだつもりであったが“再指導”という結果であった」
といった声を先生方からよく伺います。
もちろん「思ったより順調に終わった」というお話しもありますが、総じて大変というイメージが多い歯科の新規個別指導。
その原因は、医療機関が日々行っているカルテ入力や会計処理、その他書類の取り扱いを十分に理解しておらず、作業が不足している、あるいは誤った解釈をしているためです。
新規個別指導の指摘事項にある「なぜカルテにこの記載が必要なのか」「この文書を発行しなければならない理由」「この書類の持参が必要な理由」などを正確に理解する必要があります。
これらは、新規開業前に歯科医師が理解し対応しなければならず、必要であればベンダーへのカスタマイズ依頼も求められます。「よく分からない」「面倒だから後で」といった姿勢が問題を大きくする要因です。開業前の準備が重要です。
歯科医療機関における新規個別指導とは
保険医療機関とは、健康保険法等の医療保険各法に基づく、保険者と保険医療機関との間の公法上の契約です。保険医療機関の指定、保険医の登録は、医療保険各法で規定されている保険診療のルールを熟知していることが前提となります。
新規開業した医療機関は、必ず新規個別指導(※一部例外あり)を受けなければなりません。これは「保険診療の取扱い、診療報酬の請求等に関する事項について周知徹底させること」(指導大綱)に基づき実施されます。
【厚生局からの通知内容抜粋】
1.新規集団指導の流れ
概ね開業後1年以内に集団指導が実施されます。集団指導は講習形式で、保険診療の取り扱いや改定内容の伝達など、保険診療を行う上で必要なルールの周知徹底を目的とします。カルテの持参は不要です。
通知は実施1ヶ月前を目途に届き、実施時間は2時間程度です。都道府県によっては半年~1年以内に行われない場合もあります。通知内容に応じて対応しましょう。
新規個別指導が実施される場合には、集団指導が除外されるケースもあります。
2.新規個別指導の流れ
地方厚生(支)局および都道府県が、保険医療機関を一定の場所に集めて、または個別に面接懇談方式で行うのが個別指導です。
新規個別指導は、新たに指定された保険医療機関を対象に、新規指定から概ね1年程度で(集団指導を実施する場合にはその後)実施されます。通知は1ヶ月前に行われます。
対象となる保険医療機関には通知が届き、指定日に書類等を持参するよう指示されます。患者指定は開催日の1週間前に10名分が通知され、診療録(カルテ)のほか、レントゲンや技工指示書・納品書、院内掲示物などが持参物として指定されます。指導は通常1時間程度で終了します。
3.新規個別指導の対策
- 通知が届いたらまず院内でスケジュールを立て、タスクの開始・終了時間、担当者、優先順位などを設定しましょう。
- 患者指定が行われる前に、用意できるもの(日計表、アポイント帳、材料購入伝票、技工単価表、タイムカードなど)を確認しましょう。
- 指導実施日の1週間前に10名の患者が指定されますので、カルテと併せてデジタルX線(印刷)、技工指示書、納品書などを準備しましょう。
開業から日々の業務の中でしっかりと準備しておけば、1日程度で準備が完了し、当日を迎えられます。
新規個別指導後の主な指摘事項
以下は、厚生局等の指導内容をもとにした代表的な指摘事項の抜粋です。
1.診療録に関する指摘
(診療録)
診療録第1面(療担規則様式第一号(二)の1)の記載内容に次の例が認められたので、必要な事項を適切に記載すること。
- 部位、傷病名、開始年月日、終了年月日、転帰等について記載がない又は誤っている。
- 保険医は、診療録が保険請求の根拠であることを認識し、必要な事項を十分に記載すること。
- レセプトコンピュータ等OA機器により作成した診療録の記載方法、記載内容に次の例が認められたので、適切に診療録を作成すること。
- 診療を行った保険医が署名又は記名押印を行っていない。
- 歯科技工指示書に記載すべき内容に不備が認められたので、必要な事項を適切に記載すること。患者の氏名、設計、作成の方法、使用材料、発行の年月日、発行した歯科医師の氏名等
- 歯科衛生士が行った業務について、記録を作成していない。
2.医学管理に関する指摘
算定要件を満たしていない歯科疾患管理料を算定している次の例が認められたので改めること。
- 1回目の管理計画において、患者の歯科治療及び口腔管理を行う上で必要な基本状況、口腔の状態、必要に応じて実施した 検査結果等の要点、治療方針の概要等、歯科疾患の継続的管理を行う上で必要となる情報を診療録に記載していない又は記載が不十分。
- 2回目以降の歯科疾患管理料を算定した月に、当該管理に係る要点を診療録に記載していない又は記載が不十分。
- 明らかに短期間で治療が終了し、歯科疾患と関連性のある生活習慣の状況や生活習慣の改善目標等を踏まえた継続的管理が行われていない。
- 文書提供加算に係る提供文書に記載すべき内容(患者の基本状況、口腔の状態、必要に応じて実施した検 査結果等の要点、治療方針の概要等)について、画一的に記載している又は記載の不十分な例が認められたので、次の事項に ついて個々の症例に応じて適切に記載すること。
- 算定要件を満たしていない長期管理加算を算定している次の例が認められたので改めること。
- 当該管理加算を初めて算定する場合に、患者の治療経過及び口腔の状態を踏まえた今後の口腔管理に当たって特に留意すべき事項について、その要点を診療録に記載していない。
- 算定要件を満たしていない歯科衛生実地指導料を算定している次の例が認められたので改めること。
- 歯科衛生士に行った指示内容等の要点を診療録に記載していない。
- 情報提供文書に記載すべき指導等の内容、口腔衛生状態(う蝕又は歯周病に罹患している患者はプラークの付着状況を含む。)を記載していない。
- 算定要件を満たしていない新製有床義歯管理料を算定している次の例が認められたので改めること。
- 情報提供文書に欠損の状態、指導内容等の要点を記載していない。
- 情報提供文書を作成していない、又は情報提供文書の写しを診療録に添付していない。
3.届出関係の指摘
- 明細書の発行に関する事項の掲示をしていない又は掲示内容が不十分である。
- 施設基準に関する事項の掲示をしていない又は掲示内容が不十分である。
- 届出事項等 • 管理者の変更、保険医の異動について届出がされていない。
- 診療科、診療日、診療時間の変更について届出がされていない。
一部負担金 • 受領すべき者から受領していない 等
まとめ
新規開業した歯科医院にとって、新規個別指導は避けて通れない道です。しかし、日々の業務に追われる中で、これらの対策を完璧に行うのは難しいと感じる方もいるでしょう。
新規個別指導は、新たに開業した歯科医院が保険診療を適切に運用するための重要な過程です。特に、保険診療のルール遵守やカルテ管理、診療報酬請求の適正化が求められます。これらを怠ると、個別指導や返還問題に発展しかねません。
正確に理解し毎日のご診療にお役立てください。
この記事を読んだ先生へ
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著者紹介
著者:鶴巻 ひとみ (医療事務コンサルタント/レセ基地代表)
ソフトウェアメーカーを経て、歯科診療報酬の専門家としてキャリアを築く。これまで全国1,600件以上の歯科医療機関をサポートし、実務に基づいた豊富な経験と実績を持つ。
また、各地の歯科医師会、医療法人、歯科関連企業を対象に、診療報酬請求に関する研修会を多数実施。現場の課題に即した分かりやすい指導に定評がある。