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歯科医院DX実践事例|クラウドレセコン運用と電子カルテの現実解

歯科医院DX実践事例|クラウドレセコン運用と電子カルテの現実解
― 中部日本デンタルショー講演レポート ―
2026年2月15日、中部日本デンタルショーにて、「スタッフが辞めない・患者が喜ぶ! 歯科医院のDX実践ストーリー」と題して講演を行った。本稿では、その内容を歯科医師向けに整理して紹介する。
講演のテーマは、歯科医院DX、クラウドレセコン運用、診療録の電子保存に求められる3要件(真正性・見読性・保存性)、そして医療情報の一元管理である。単なるIT導入事例ではなく、開業時に何を判断基準とし、実際にどう運用し、その結果として院内の行動や診療の質がどう変化したのかに焦点を当てた。
自院のDXレベルを5分で整理したい方へ
講演内容をもとに、カルテを中心とした医療情報管理の観点から、現状の課題を可視化できるチェックリストをご用意しています。
開業時に直面した3つの課題と、電子保存要件との向き合い方
2020年の開業時、私が直面した課題は大きく3つあった。
1つ目は、電子カルテの要件を満たすことと、日常診療での操作性をどう両立させるか。
2つ目は、医療情報をいかに一元管理するか。
3つ目は、情報伝達とスタッフ間連携をどう設計するかである。
歯科医院DXを進めるうえで、最初に向き合うことになったのは「電子保存の要件」だった。
電子保存の三原則
診療録を電子的に保存する場合、いわゆる「電子保存の三原則」が求められる。
- 真正性
- 見読性
- 保存性
この3要件を満たすことは、実際には想像以上に難しい。
見読性と保存性については、クラウド型システムの活用によって比較的対応しやすい。閲覧性の確保やデータ保存の安定性は、技術的に強化しやすい領域だからである。
一方で問題となるのが真正性だ。たとえば、
- 編集履歴の追跡
- 記載責任の明確化
- 誤消去防止
といった要件を厳密に担保しようとすると、どうしても操作性が落ちやすい。
実際、より真正性の高い設計を備えたレセコンも検討した。しかし最終的には、操作性とのバランスを優先した。スタッフが日常診療の中で無理なく使い続けられないシステムでは、現実的な運用が成立しないと判断したからである。
(当時の厚生局の指導では紙カルテが原本であり、当院では印刷して保存している)
真正性・見読性・保存性という制度上の要件を踏まえつつ、日常診療で継続運用できる実効性を重視する。この視点は、歯科医院DXにおいて極めて重要だと思う。制度要件を満たすだけでは不十分であり、無理なく回り続けることこそが本質的な判断基準になる。
レセコン選定で重視した4つの判断基準
開業時には、レセコンより先に導入が決まっていたシステムがあった。
- 歯周組織検査アプリ
- X線システム
したがって、これらとの連携は前提条件だった。そのうえで、レセコン選定にあたって重視した点は4つある。
① 将来的に電子カルテへ移行できる可能性
当初は電子カルテの導入も検討したが、現実的なハードルを考え、まずはレセコン運用を選択した。ただし、将来的に電子カルテへ移行する可能性は常に想定していた。
そのため、将来の移行時に大きな障害にならない会社であること、制度的背景やデータ移行の考え方を理解していることを重視した。目先の機能だけではなく、将来を見据えて選ぶことが重要だった。
② 医療情報の一元管理が可能であること
カルテ情報と画像診断、検査結果をリンクできるかどうかは、極めて重要な判断基準だった。
- 画像や検査データをカルテ内に貼付できること
- 診療に必要な情報が分散せず、一つのシステム内で完結すること
- 単なる入力システムではなく、複数システムの情報を汎用形式で一元管理できること
この点は、後の運用効率に直結する。
③ 指示出しとフィードバックが可能であること
ドクター、歯科衛生士、受付といった職種間で、情報共有が円滑に行えることも不可欠だった。
歯科医院DXの価値は、システムを導入すること自体にはない。院内で情報がどう流れ、どう次の行動につながるかにある。入力のしやすさだけでなく、連携しやすい仕組みであることを重視した。
④ 医院外からもアクセスできること
自宅や訪問診療先からのアクセスも前提としていた。そのため、クラウドシステムの採用は必然だった。
レセコン選定では、機能比較だけでなく、「実際の運用に合うか」「将来の拡張に耐えられるか」を見極める必要がある。
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レセコン選定では、機能だけでなく「運用との適合性」や「将来の拡張性」を見極めることが重要です。 選定時に押さえるべきポイントを整理した資料もご用意しています。 |
情報の一元管理とクラウドレセコン運用
今回の講演で最も伝えたかったのが、「情報の一元管理」の重要性である。
私はサブカルテを作成していない。一般的によく使われるサブカルテを用いず、必要な情報はすべてクラウドレセコン内に記載する運用としている。当院ではクラウドレセコンとして「Sunny-NORIS Cloud」を使用しているが、情報を分散させないことが、歯科医院DXの基盤になると考えている。
💡 Sunny-NORIS Cloudでの実践例|サブカルテを使わない一元管理
当院では、Sunny-NORIS Cloudのカルテ画面1つに、以下の情報をすべて集約しています。
- 2号用紙への診療記録
- 自由記載欄への補足情報
- 治療計画管理欄への計画と進捗
- 任意情報欄への家族構成・通院中医療機関などの背景情報
- 伝言板への当日の申し送り
紙のサブカルテや別ファイルを併用せず、「カルテを開けば必要な情報がすべて揃う」状態を維持しています。
画像データの扱い
当院で扱っている画像データは以下の通りである。
- パノラマ
- デンタル
- CT
- 口腔内写真
- 歯周組織検査データ
これらはJPEG形式で出力し、次の流れで運用している。
① 画像データを院内サーバーへ保存(バックアップ)
② レセコン内のカルテへ貼付
③ クラウド上にも保管(バックアップ)
この三段階運用により、二重バックアップ体制を構築している。
💡 Sunny-NORIS Cloudでの実践例|画像のカルテ貼付運用
パノラマ・デンタル・CT・口腔内写真・歯周組織検査データは、すべてJPEG形式に変換した上で、Sunny-NORIS Cloudのカルテ画面に直接貼付しています。
JPEGという汎用形式を採用しているのは、特定のビューワーに依存せず、将来的なシステム移行時にもデータが活用できる状態を保つためです。
結果として、診療中はカルテと画像を同一画面で確認でき、別端末で画像を探す手間が発生しません。
画像をカルテに直接貼付することで、
- 時系列で管理しやすい
- 検索時間が短縮される
- 画像と文字情報が一致する
といった効果が得られた。
カルテと画像を同一画面内で確認できることは、診療効率の向上に直結する。診療中に別端末で画像を探す必要がなくなり、情報確認の動線が短くなるからである。
情報伝達の工夫と、スタッフ間連携の設計
サブカルテを使わない代わりに、カルテ内の記載欄を最大限活用している。具体的には、
- カルテ文字情報の自由記載欄
- 2号用紙以外の記載欄
- 治療計画管理欄
- 任意情報・伝言板機能
などである。
特に重要なのが「伝言板」機能だ。
たとえば、
- ドクターから受付への予約指示
- 歯科衛生士による当日の所見の一時記録
- 継続的な患者情報の記録・共有
に活用している。
💡 Sunny-NORIS Cloudでの実践例|伝言板の使い分け
伝言板は、当院では主に3つの用途で使い分けています。
- 当日の指示伝達:ドクターから受付への「次回予約は◯週間後で」といった指示
- 記録途中の一時保存:歯科衛生士が所見を入力途中の段階で残しておく用途(Sunny-NORIS Cloudはカルテを複数同時に開けない仕様のため、この使い方が有効)
- 継続情報の蓄積:家族構成、通院中の医療機関、患者の希望など、診療に付随する背景情報
カルテを開いたスタッフのみが閲覧する仕様を活かし、「全員に見せる」のではなく「必要な人にだけ届く」運用を実現しています。
カルテ画面を同時に複数開けない仕様であるため、歯科衛生士が記録途中の所見を一時的に残す用途としても有効だった。また、家族構成や通院中の医療機関といった診療に付随する情報も蓄積し、必要時に参照できるようにしている。
これらの情報は、診療日ごとに共有している。カルテを開いているスタッフだけが閲覧できる仕様を活かし、「全員に見せる」のではなく、「診療フローの中で必要な人に、必要な情報を渡す」設計にしている。
一方で、重要な情報を通常のカルテ記載だけに埋もれさせると、そのページを開かなければ確認できない。その意味でも、2号用紙以外の記載欄があることは非常に重要だった。
当院では、治療計画や実施内容、そのチェックリストや検査日、予約に関する事項、申し送りなど、複数の入力欄を使い分けている。
情報の一元管理とは、単にデータを集約することではない。診療の流れの中に情報共有を組み込み、業務と一体化させることこそが本質である。
歯科医院DXによる業務効率化
実際に得られた効果のひとつが、業務効率化である。
- 画像検索時間の削減
- カルテとの見合わせ作業の不要化
画像と文字情報が同一画面で確認できることで、診療スピードは明らかに向上した。
歯科医院DXは、単なるIT導入ではない。診療動線の短縮、確認作業の削減、情報探索時間の圧縮といった、日々の診療に直結する改善である。1回あたりは数分の短縮でも、それが1日、1週間、1か月と積み重なると大きな差になる。
💡 Sunny-NORIS Cloudでの実践例|画面動線の短縮
従来は「カルテ画面→画像ビューワーを起動→該当画像を検索→カルテに戻る」という動線が必要でした。
現在はカルテ画面内に画像が貼付されているため、スクロールするだけで時系列に沿って画像と記録を確認できます。患者説明の際も、画面を切り替えずに「前回はこの状態でした」と即座に提示可能です。
患者説明の質の変化と、患者満足度への影響
画像をその場で提示しながら説明できるようになったことも、大きな変化だった。
カルテに貼付された画像を即座に確認できるため、
- 担当者が変わっても説明内容が安定する
- 伝達のブレが減る
- 患者との認識のズレが少なくなる
といった効果が生まれた。
診療中に画像データを探し直す必要がなくなり、説明そのものに集中できる環境が整った。歯科医院DXは、患者満足度の向上にも直結する。説明の安定性は、そのまま信頼の安定性につながるからである。
スタッフ教育と、算定漏れ防止への波及効果
画像管理の仕組みは、スタッフ教育にも影響を与えた。
- カルテと画像の一致確認
- 診療記録の再確認
- データ整合性のチェック
こうした確認作業が、日常の中で自然に行われるようになった。
さらに、画像をカルテへ貼付するためには、算定項目の入力が必要になる。その過程で算定忘れに気づく場面も増えた。
「先生、これはどこに貼るのですか?」
こうした確認が、結果として算定漏れ防止につながることも少なくない。
💡 Sunny-NORIS Cloudでの実践例|算定と画像貼付の連動
当院では、画像をカルテに貼付する流れの中で、算定項目を確認する動線になっています。
このため、スタッフが画像を貼り付けようとした段階で「該当する算定が入力されていない」ことに気づきやすく、算定漏れのチェックが日常の画像管理作業の中に自然と組み込まれています。
歯科医院DXは、単に効率を上げるだけではない。院内に確認文化を生み、情報を扱う責任意識を高める作用もある。
電子保存の要件は、制度論より「運用設計」で決まる
電子保存では、真正性・見読性・保存性の3要件が前提になる。もっとも、実際の現場で難しくなるのは、制度そのものよりも「どう運用に落とし込むか」だと感じている。
見読性と保存性は、クラウド型システムによって比較的整えやすい。一方で、真正性は、編集履歴の扱いや記載責任の明確化、誤消去防止など、日々の運用と密接に関わるため、システム仕様だけでなく院内ルールで補う視点が欠かせない。
要件を厳密に満たそうとすると操作性が落ちることもある。そのため重要なのは、制度対応を形式的に整えることではなく、診療の流れを止めずに、継続可能な形で運用できる設計にすることだと考えている。
実践を通じて見えてきた、歯科医院DX実現の3つのポイント
講演では、実践を通じて見えてきたポイントを3つに整理して紹介した。
① 情報の一元化
カルテと検査データを一つのシステムで管理すること。JPEGなどの汎用データ形式を活用すること。情報が散在しない環境を整えることが、DXの出発点である。
② 見える化
画像がすぐ見られること。これによって、
- 診断の安定
- 患者説明の安定
- スタッフ教育の効率化
が実現する。
「見える」こと自体が、院内の行動を変える推進力になる。
③ ベンダーとの伴走
トラブル対応やシステム連携において、ベンダーとの関係は非常に重要である。業界標準やデータ共通化を理解し、継続的に協力できる関係であることが、長期的なDXを支える。
まとめ|歯科医院DXの本質とは何か
クラウドレセコン導入を軸とした歯科医院DXは、単なる業務効率化にとどまらない。
- 診療の質の向上
- スタッフ教育
- 患者満足度の向上
を同時に実現しうる取り組みである。訪問診療時にも直接参照・編集できる点は、大きな利点のひとつだ。
最後に講演で強調したのは、日常的にシステムを使うスタッフの努力と協力なくして、DXは進まないということである。
デジタル環境を整えること自体が目的ではない。組織が自然に変化し、よりよい診療行動が生まれる環境をつくること。それが、私が考える歯科医院DXの本質である。
ここまで読んで、「自院ではどこまでできているだろうか」と感じた先生も多いのではないだろうか。
本講演の内容をもとに、カルテを中心とした医療情報管理の観点から、自院のDXレベルを整理できるチェックリストも用意されている。5分程度で現状の課題を可視化できる内容とのことなので、関心のある方は確認してみてほしい。
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ここまで読んで、「自院ではどこまでできているか」と感じた方も多いと思います。 本講演の内容をもとに、 カルテを中心とした医療情報管理の観点から 医院のDXレベルを整理できるチェックリストをご用意しています。 5分で現状の課題が可視化できます。 ※本資料は講演参加者向けに提供したチェックリストです。 簡単なアンケートにご回答いただくことでダウンロードいただけます。 5分でDX課題を診断する ※本記事で紹介した運用は、クラウドレセコンをベースとしています。 システムの詳細については、製品ページをご参照ください。 |
著者紹介
著者:菱川敏光(歯科医師/日本歯周病学会認定 歯周病専門医)
国立長崎大学歯学部卒業、愛知学院大学大学院修了。
日本歯周病学会認定歯周病専門医。
歯周病治療を中心に、はぐきの健康を重視した診療を実践。
愛知学院大学歯学部招へい教員。2021年よりひしかわ歯科院長。

