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歯科の行政指導・新規個別指導を正しく理解する|カルテ・レセプトの基本と留意点

前回は医療機関で使用しているレセコンの選択ポイントをお伝えしましたが、今回より行政指導における具体的な失敗事例をお伝えします。
なお、本稿で紹介する留意点は、新規個別指導に限らず、集団的個別指導や通常の個別指導でも共通して確認される基本事項です。
使用しやすいレセコンを選択し、行政指導で失敗しないよう毎日のレセコンの入力や会計処理を理解しておくことが大切です。
多くの先生がこう語るように、開業後まもなく迎える「新規個別指導」は、
診療体制・帳票整備・カルテ運用のすべてが問われる大切な機会です。
本記事では、行政指導での失敗を防ぐために押さえておきたい
カルテ・レセプト記載の基本と留意点をまとめています。
📝 新規個別指導、何を準備すればいい?
“最低限やるべきこと”を1枚に整理した準備チェックリストをご用意しました。
- 患者指定前・指定後の対応
- 掲示物や帳票整備のチェックポイント

新規個別指導2025年実施計画
本年も新規開業を対象とした歯科医療機関に対し「新規個別指導」が7月より実施されており、年内では残すところ10月・11月と計画されています。
東京都の場合は下記日程となります。
(参照:東京歯科保険医協会HPより)
基本ルールを遵守すること
保険医療機関及び保険医療養担当規則(療担規則)などの基本的なルールを理解し、遵守することが求められます。診療録の適切な記載や診療報酬の正確な請求ができているかが重要です。
厚生局より発行されている「保険診療の理解のために」という冊子に保険制度から健康保険法等に基づく指導・監査について等が下記の通り示されています。診療録(カルテ1号用紙)に関連する部分を抜粋し明記します。
歯科診療報酬点数表に関する留意事項
Ⅰ診療録(カルテ)
❖診療報酬請求の根拠は、診療録にある
❖診療録記載は歯科医師法、療養担当規則に基づく重要な義務である
(1) 診療録とは
診療録(カルテ)は、診療経過の記録であると同時に、診療報酬請求の根拠でもある。診療事実に基づいて必要事項を適切に記載していなければ、診療報酬請求の根拠がないと判断される場合がある。
(2) 診療録に関する規定
①診療録の記載(歯科医師法第23条、療担第22条)
・ 歯科医師は、患者の診療を行った場合には、遅滞なく、必要な事項を診療録に記載しなければならないとされており、さらに歯科医師法においては違反した場合での罰則も規定されている。(50万円以下の罰金)
②診療録の整備、保存(歯科医師法第23条第2項、療担第8条、第9条)
・ 保険診療に必要な事項を記載し、他の診療録と区別しなければならない。
・ 患者の診療録は、その完結の日から5年間保存しなければならない。
・ 療養の給付の担当に関する帳簿・書類その他の記録は、その完結の日から3年間保存しなければならない。
(3) 記載上の留意点(一例)
・ 診療の都度、診療の経過を記載する。必然的に、外来患者であれば受診の都度、入院患者であれば原則として毎日、診療録の記載がなされることになる。
・ 診療録に記載すべき事項が、算定要件として定められている診療報酬点数の項目があることに留意する。
・ 修正等の履歴が確認できるよう、記載はペン等で行うとともに、修正は修正液・貼り紙等を用いず二重線で抹消し行う。
・ 責任の所在を明確にするため、記載の都度、署名又は記名押印を必ず行う。またレセコンで作成した診療録については、たとえ保険医療機関に従事する歯科医師が1人しかいない場合であっても上記同様、記載の都度、署名又は記名押印を必ず行うこと。
(4) 医療情報システム(電子カルテ等)に関する留意点
・ 端末使用開始前に、ログアウトの状態であることを確認すること。また、席を離れる際には必ずログアウトすること。
・ パスワード等を記したメモ等を端末に掲示等しないこと。
・ 歯科医師が他の者(例えば看護師、歯科衛生士、歯科助手等)にパスワードを伝達し、食事、臨時処方等のオーダーの入力代行等をさせることのないようにすること(場合によっては、当該看護師等の無資格診療を問われる可能性がある)。
・ 電子カルテにおいても紙カルテと同様に、修正等の履歴が確認できるシステムが構築されていること。
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Ⅱ傷病名
❖診断の都度、医学的に妥当適切な傷病名を、診療録に記載する。
❖いわゆる「レセプト病名」を付けるのではなく、必要があれば症状詳記等で説明を補うようにする。
(1) 傷病名記載上の留意点
歯科医学的に妥当適切な傷病名を主治医自ら付けること。請求事務担当者や受付が主治医に確認することなく傷病名を付けることは厳に慎むこと。
・ 診断の都度、診療録(電子カルテを含む)の所定の様式に記載すること。なお、電子カルテ未導入の医療機関において、「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」に未準拠のオーダーエントリーシステムに傷病名を入力・保存しても、診療録への傷病名の記載とは見なされないため、必ず診療録自体に記載すること。
・ 慢性・急性の区別、部位・上下左右の区別を記載すること。
・ 診療開始年月日、終了年月日を記載すること。
・ 傷病の転帰を記載し、病名を逐一整理すること。特に、急性病名が長期間にわたり継続するのは不自然な場合があるので、適宜見直しをすること。
・ 疑い病名は、診断がついた時点で、速やかに確定病名に変更すること。また、当該病名に相当しないと判断した場合は、その段階で中止とすること。
(2) 症状詳記
レセプト上の傷病名等のみで診療内容の説明が不十分と思われる場合は、請求点数の高低に関わらず、「摘要欄」や「症状詳記」で補う必要がある。
・ 当該診療行為が必要な具体的理由を、簡潔明瞭かつ正確に記述すること。
・ 客観的事実(検査結果等)を中心に記載すること。
・ 診療録の記載やレセプトの内容と矛盾しないこと。
(3) いわゆる「レセプト病名」について
保険適応外の診療行為や医科領域疾患を適応とする投薬を保険請求するためにレセプト作成のためのみに用いられる、実態のない架空の傷病名(いわゆる「レセプト病名」)を用いてレセプトを作成することは、極めて不適切であり、返還の対象となるだけでなく、不正請求とも判断されかねないものである。
保険診療に関するその他の事項
- 診療録とレセプト内容の整合性を常に確認。
- 中止・取消処置が誤算定されていないかチェック。
- 診療内容の根拠は「症状詳記」で補足する。
失敗例:カルテ1号用紙編
新規個別指導失敗例①
「傷病名欄」の記載は誤りがとても多い箇所です。
カルテ病名とレセプト病名は違います。入力はカルテ病名で行いましょう。
新規個別指導失敗例②
「開始欄」はその処置に対し着手した日をキチンと記載しましょう。
「終了欄」は当該処置が完全に終了した日を記載します。
新規個別指導失敗例③
「転帰欄」は忘れずに記載してください。また記載も注意が必要です。
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著者紹介
著者:鶴巻 ひとみ(医療事務コンサルタント/レセ基地代表)
ソフトウェアメーカーを経て、歯科診療報酬の専門家としてキャリアを築く。全国1,600件以上の歯科医療機関をサポートし、実務に基づいた豊富な経験と実績を持つ。
各地の歯科医師会、医療法人、歯科関連企業で、診療報酬請求に関する研修会を多数実施。
